HEDSPI - JICA - HUSTの紹介

TC 2024/08/22

1. HEDSPIプロジェクトの紹介 - 成り立ちの背景

 2006年に、日本政府とベトナム政府との協力で、「情報通信技術に係る高等教育開発支援プロジェクト」(Higher Education Development Support Project on ICT、以下、「HEDSPI」と呼ぶ)が、ベトナムの理工系最高峰の大学であるハノイ工科大学(Hanoi University of Science and Technology、以下、「HUST」と呼ぶ)で実施されました。本プロジェクトの目的は、日本市場向けのITエンジニアを育成し、ベトナムにおけるIT教育の質を向上させ、IT業界の発展を促進することです。

 

(ハノイ工科大学の写真、大学公式Webサイトより引用)

 

HEDSPIプロジェクトの成り立ちの背景について

ベトナム側では、社会主義に沿った工業化と近代化による工業国化を目指すために、ベトナム政府が「社会経済開発戦略」(2001〜2010年)を策定しました。

様々な要素を考慮した上で、ベトナム政府は他の産業よりも先に、情報産業及びソフト産業の開発を優先することに決定しました。

また、2000年代初頭、ベトナムのIT業界の市場規模は急速に拡大し、年間25%の高い成長率を達成しました。その中で、日本市場はベトナムにとって重要なターゲットとなり、20%以上を占めていました。

そのような高い成長の可能性があったにもかかわらず、当時のベトナムのIT業界にはまだ課題が残っていました。それはカリキュラムが理論、知識の習得に偏重し、大学・研究機関の資金不足により資機材が旧式のものでした。そのため、卒業生の多くが実社会の要請に的確に応えるIT技能、問題解決能力を習得していなかったという課題があげられます。また、教育と研究開発を両立する機会が確保されておらず、近代的教授法、最新技術水準の資機材活用技術を備えた専門性の高い教員、研究開発者が不足していた問題もありました。

日本側では、結婚率の低下、結婚しても子供を持たない夫婦が多いこと、高齢化の急速な進行などが日本社会で深刻な問題となっています。これらの問題は、日本が深刻な人材不足に直面する原因となり、特に情報通信技術(IT)分野で顕著です。国内の労働力の減少に伴い、日本の産業は国際市場での成長と競争を維持することが困難になり始めました。

この問題を解決するために、日本政府は外国からの人材が必要であると判断しました。中国、インド、フィリピン、バングラデシュ、そしてベトナムなどの国々が、日本に労働力を提供する可能性のある国としてリストアップされました。

多くの重要な要素、例えば人間、文化、タイムゾーンの相違などを考慮した結果、日本政府はベトナムの人材に注目しました。さらに、多くのベトナム人教授や博士が日本で大学院の研究を行った経験があり、これも両国の協力関係を強化する重要な要素となっていました。これらの人々の多くは、日本の教育機関や研究機関で引き続き活動を行ったり、ベトナムに帰国して大学で教えたり、両政府の協力プロジェクトに参加したりしていました。

その上、日本政府も、より多くの外国人が日本に来て留学し、働くことを望んでいました。2004年4月は、外務省が「対ベトナム国別援助計画」を策定し、日本の産業強化にも繋がる人材育成(日本への留学生)に注目するのが明らかになりました。翌年の4月はJICA(独立行政法人国際協力機構)が「海外経済協力業務実施方針」を策定し、「持続的成長を図る上で根幹を成すものとして開発を支える幅広い人的資本の確保」を掲げて重点分野として人材育成支援も重視していました。また、この2005年にJICAに策定された「国別業務実施方針」でも、市場経済化や産業競争力強化に資する人材育成支援を検討することが掲げられました。

 

検討と調査を行った結果、両国政府は、HEDSPIプロジェクトがベトナムの成長のために支援し、日本への留学生や日本企業での就職を促進し、両国には役に立つと認識しました。

本プロジェクトの実施はベトナムの開発政策、開発ニーズ、日本の援助政策と十分に合致しており、妥当性は高いと考えられました。その上、本プロジェクトを通じて、ベトナムと日本の関係はさらに強化されました。今、ベトナムと日本の関係は非常に良好です。

以上より、日本政府はベトナムへの投資を決定しました。

HEDSPIプロジェクトは、上記の背景で生まれました。

 

2. HEDSPIプログラムの導入

 2000年10月にタイのチェンマイで開催されたASEAN+日本・中国・韓国の経済閣僚会合において、日本の提案により「アジアITスキル標準化イニシアティブ」が採択されました。これは、30年以上に渡る情報処理技術者試験の経験・ノウハウを持つ日本が、ASEAN各国で同様な試験制度を創設するのを支援することでIT人材の流動性の向上・有効活用を図るということです。HEDSPIは、この「アジアITスキル標準化イニシアティブ」の方針に基づいて日本語および実践的で高度なIT教育を実施しました。2006年から2014年まで日本のODAプロジェクトとしてJICAによって運営されていました。

 

(ハノイ工科大学の写真、大学公式Webサイトより引用)

 

HEDSPIは、技術協力支援事業である「HUST ITSS 教育能力強化プロジェクト(2006-2012)」と、JICAの円借款事業(ベトナム政府からの対応資金を含む)である「高等教育支援プロジェクト(2006-2014)」から構成され、以下の2点を目的に設置されました。

 ・ベトナムにおけるIT教育の質の向上とIT産業の発展:

  HUSTにおいてITSSに準拠したモデル教育プログラムを実施し、IT専攻の学生に必要なスキルと知識を備えさせ、優れた人材を育成することで、国の経済発展に貢献することを目指しました。また、IT技術の進展を通じたベトナム国の産業競争力が強化されます。

 ・日本のIT産業における人材ニーズへの対応:

  日本語のできる優れたIT人材(ITSSレベル3(業務に必要な知識を持ち合わせ、独力で業務を進めることができるレベル)相当のITスキルと日本語能力試験N3、N2、N1、BJTの日本語スキルを持つ技術者、ブリッジSE(ブリッジエンジニア)など)の育成により、日本国内におけるIT業界に輩出し、ベトナムと日本の架け橋となることを目指しました。

 

HUSTにおいて、入試の得点が26点以上(満点は30点、試験科目は数学、物理、化学)で合格した学生には、HEDSPIプログラムを受験する機会が与えられます。また、HEDSPIプロジェクトは毎年120名前後の学生を受け入れており、5年間の特別なカリキュラムで以下の内容を教えます。

 ・ITに関する知識について、大学の共通カリキュラムに準拠しており、HUSTの優れた講師が担当します。

 ・日本語について、1〜3年次は基礎的な日本語を勉強してN3取得を目指します。4、5年次は日本語でITを勉強し、日本人のエンジニアが講師として務めます。

さらに毎年、その中から選抜された学生 20 名が、奨学生として立命館大学、慶応義塾大学、会津大学といった日本の大学に 3 年次から留学することになっています。

 

卒業後、学生は十分な知識、スキル、および日本語能力を身につけ、エンジニアや日系IT企業とベトナムIT技術者を繋ぐブリッジSEとして優れた人材となり、日本とベトナムのIT業界の発展に貢献することが期待されています。

 

3. HEDSPIプロジェクトの評価

 ここ約20年間、HEDSPIプログラムは、国際基準に応える高品質なソフトウェアエンジニア、ブリッジSEを育成するために不断の努力を重ねてきました。その結果、HEDSPIは日本の労働市場において着実に確固たる地位を確立しています。

 

このプログラムの卒業生の7割は、日本で魅力的な給与と昇進の機会を得て働いています。ほとんどの卒業生は基本情報技術者試験(FE)の合格証明書、および日本語能力試験のN3、N2、N1、JBTなどを持っています。現在のように確固たる地位を確立し、高い信頼性を達成するために、HEDSPIの学生は専門技術だけでなく、チームワーク、コミュニケーション、問題解決、異文化環境への適応などのソフトスキルも徹底的に訓練されています。

2011年に卒業した学生達は、HEDSPIの最初の卒業生です。当初は知名度が高くないですが、数年後にはみんなの能力が認められ、Dentsu、Toshiba、Rakuten、IBM、LINE、Mercari、Microsoft、GMOなど、日本のトップ企業から引く手あまたで募集されていました。

また、HEDSPIの教育品質について、JICAの評価調査結果要約表には「一連の評価結果により、本件プロジェクト評価は概ね高い。特に妥当性、インパクトについては、日系IT企業の進出増加などに伴い、プロジェクト開始時に想定していたものより高い結果が出ている」評価が記載されています。

JICAの評価調査結果要約表のURL: https://www2.jica.go.jp/ja/evaluation/pdf/2011_0800228_3_s.pdf

 

多くのHEDSPIの卒業生は、日本での実務経験を蓄積して帰国後、ベトナムでブリッジSEやテクノロジー企業の設立や代表取締役など重要な役職で活躍しています。特に、オフショア開発を行う日系 IT 企業でのブリッジSEの経験などを活かしてベトナムと日本の協力関係を一層深めるために大いに貢献している人が多いです。

 

4. KIAISOFT ハノイ工科大学の優秀な人材の集会所

 日本のIT人材不足や中国などの人件費の高騰により、日系IT企業に対してはオフショア開発が重要になっています。現在(2024年8月時点)まで、多くのHEDPSIプロジェクト卒業生はハノイ、ダナン、ホーチミンにおける日系IT企業で管理者やマネージャー、社長などの重要な役割を果たしています。また、HEDPSIプロジェクト卒業生が創立したIT企業と共に、日越外交関係をさらに密接にし、ベトナムのIT業界の発展に寄与し、日本のIT企業の深刻な人材不足の解消に貢献しています。

 

Kiaisoftの設立のストーリーについて、日本で仕事や研究(修士・博士)をした4人のHEDSPI卒業生から始まりました。日本での研究と仕事の期間を通じて、彼ら4人が日本の職場環境に深く興味を持ち、理解するようになったので、日本水準の職場環境をベトナムで作り出すという決意となりました。Kiaisoftの取締役会全員の10人はハノイ工科大学を卒業生で、みんな日本の大手企業(GMO、楽天など)働いたりした経験があります。そのうち、日本で修士や博士の学位を取得した人もあります。

Kiaisoftは、新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい、経済全般に大きな影響を及ぼしていた時期に設立されましたが、熱心な精神と確固たる専門スキルを持つ社員のおかげで、困難を乗り越え、過去5年間にわたり成長を続けてきました。現在、Kiaisoftは3つの支店と1つの先端技術に特化する子会社まで拡大して、従業員数が220名以上で、2024年末に300名に達する目標を目指しています。

 

Kiaisoftの支社と子会社について

・Kiai Soft Japan合同会社

 日本にあり、日本人の従業員もあり、オンサイト・設計・要件定義の分析が必要なプロジェクトの対応

・株式会社キアイソフト (Kiaisoft)

 ベトナムのハノイにあり、Web開発、スマートフォンアプリ開発

・株式会社キアイソフト ダナン (Kiaisoft Da Nang )

 ベトナムのダナンにあり、HR TechとFlutterアプリ中心の開発

・先端技術に特化する子会社:

 Kiai AI/IoT/Blockchain(AI開発(独自LLM/画像解析/OCR/機械学習等)、イーサリアムやDAppsなど実装)

 

【2024年】ベトナムオフショア開発会社であるKiaisoftの設立5周年記念

 

Kiaisoftは定期的に社内イベントやレクリエーション活動を行い、良好な社員関係を促進しています。

 

日本で身につけた技術、働き方及び品質管理、チームワークスキルを基づいて、Kiaisoft取締役会はコアバリューとして「誠実 ・ シェアリング ・ ありがとう ・ 尊敬」という4つの文化を構築し、実際に適用しています。Kiaisoftはいつもお客様の満足を追求し、高品質な製品を適正な価格で提供することを目指しています。